BiSHとは何者か? その結成から再起動までを振り返る

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(注)超長文です。なお、この記事はBiSHの再起動に向けて、これまでのBiSHの歩みを振り返ったものです。どちらかというと、セントチヒロ・チッチ やアユニ・D、モモコグミカンパニー寄りの記事です。

 

BiSHの再起動ワンマンライブ〈REBOOT BiSH〉のレポは以下を参照

monooto3.hatenablog.com

 

BiSHについてはアイドルの専門誌だけでなく音楽雑誌や、企業が運営するWEBサイトから個人ブログまでが幅広く取り上げており、特に付け加えるような事は無いと思っていた。

 

BiSHが凄いのは皆知っている。今更、凄い凄いと騒ぐのもバカらしい。

 

しかし2020年に突如出現した新型コロナウイルスの脅威により、音楽業界を含むエンターテイメント業界は大ダメージを受けた。

 

BiSHの活動も停滞することとなったのだが、大きな制約を受けつつも彼女たちは歩みを止めることなく、力強く前進している。

 

良い機会なのでBISHのこれまでの活動を簡単に振り返ってみたい。

 

BiSHは2015年1月に、アイドルグループBiS(第1期)の後継グループとして結成された。BiS(第1期)というのは、ファーストサマーウイカなどが在籍した伝説のアイドルグループだ。

 

メンバーが全裸で樹海を走り回るMVを公開するなど、破天荒な活動で大きな話題を呼んだ。ただ活動が過激すぎたため批判も浴び、2014年の横浜アリーナ公演で解散した。

 

BiS(第1期)のプロデューサーだった渡辺淳之介はアイドル業界の風雲児として名を馳せることになった。

 

その渡辺が所属していた、つばさレコーズから独立した後「BiSをもう一度始める」と宣言して結成したのがBiSHだ。

 

異端のアイドルグループとはいえ、BiSが横浜アリーナという一つの頂点を極めて終わったため当初はBiSを超えるのが最大の目標だった。

 

会社から独立して音楽業界の中で方向性を色々模索したものの、BiSを手掛けていた時より充実感が無い、小さくまとまってしまっていると感じた渡辺がもう一度BiSをやりたいと言って始めたBiSH。

 

渡辺は「過去の栄光にすがらなきゃいけない」と言っていた。BiSHはいわばBiSの焼き直しとして始まった。

 

プロジェクトの進行を記録として残すため音楽サイトの「OTOTOY」で始まった連載のタイトルも「二番煎じは本物を超えられるか?」だった。このタイトルにしたのは、渡辺の中で、二番煎じが本物を超えた試しが無いと感じていたからだ。

 

最初の連載の中で渡辺は「僕の責任編集というか、命を懸けてやるものを作ろうと」「楽しくないんですよね。生きるか死ぬか位の勝負をしないと」などと言っている。それ程の情熱を懸けてプロジェクトを立ち上げた。

 

そしてオーディションを経て2015年の3月にメンバーが発表された。

 

応募総数700名以上の中からユカコラブデラックス、セントチヒロ・チッチ、モモコグミカンパニー、ハグ・ミィ、そしてアイナ・ジ・エンドの5人が選ばれた。

 

今でこそ、BiSHの絶対エースとして君臨するアイナだが、本来はオーディションで落とされるはずだった。歌の審査で「1コーラス、短くていいから」と指示されていたのに、1人で1曲、4分近くかけて歌い切った。しかも誰も聴いたこともない自作曲。

 

空気の読めない子は要らないという事で、渡辺淳之介と音楽プロデューサーの松隈ケンタはアイナを落とそうとした。それを止めたのは衣装担当の外林健太だ。彼がアイナに服を着せたいと強く主張したおかげで、彼女は辛うじてBiSHに入ることができた。

 

もしあの時、アイナを落としていたら今のBiSHは当然ないだろう。アイナこそBiSHにおける歌とダンスの中心人物だからだ。

 

しかし音楽のプロフェッショナルであっても、アイナの才能を見抜けないのだから不思議なものだ。まあそんなものなのだろう。潜在的な才能の大きさなんて誰にも分からない。

 

なお、この5人の内、表現活動の経験がゼロだったのはモモコだけだ。あとのメンバーはアイドルやバンド、歌手をやるなど、何かしらやっていた。

 

なぜ高学歴の文学少女で、どちらかというと内向的なモモコはアイドルになろうと思ったのだろうか?彼女の著書から引用する。

 

もしかしたら、漠然と人前に出たいと思っている人は誰かに認めてもらいたいと思っているのではないだろうか。その“誰か”は実は自分自身で、自分で自分のことをうまく認められないから、人前に出て他人に自分を映して自分のことを確認しようとする。

 

とのことだ。

 

アイドルを目指す子は承認欲求の塊と渡辺は言っていたが、モモコの理由もそんなところだろう。

 

ちなみにモモコはオーディションに受かるとは思っていなかったし、受かるつもりもなかった。アイドルになりたい子を実際にみて、人間観察するのが真の目的だった。

 

オーディションの集団面接にICレコーダーを持ち込んで、他の子の会話や歌を録音し、家に帰ってそれを聞きながら笑っていたという恐ろしい女の子がモモコだ

 

そんな個性的なメンバー5人が選抜され、そこから順調に活動開始かと思いきや、初のアルバム完成前に、ユカコがいきなり脱退するというアクシデントに見舞われる。ユカコは初ライブにも参加していないので幻のBiSHメンバーだ。

 

ユカコは元々ガールズバンドのギターボーカルとして活躍していたので、BiSHとしての活躍も見てみたかった。

 

ただ、ユカコの歌声はファーストアルバムに採用されているし、ユカコが作詞した「MONSTARS」はライブの定番曲となっているので、彼女の足跡はしっかりとBiSHに残っていると言っていいだろう。

 

そのデビュー・アルバム『Brand-new idol SHiT』をひっさげ、BiSHが初ワンマンを開催した場所は、キャパ100人程度の小規模なライブハウス中野heavy sick zero。全てはそこから始まった。

 

チケットはソールドアウトし、会場はオーディエンスで足の踏み場も無いほど。また異様な熱気と興奮の中、清掃員(ファンの通称)たちは無我夢中で踊りまくったと、当時のレポートは伝えている。

 

なおその時のBiSHのキャッチコピーは新生クソアイドル。ファンの通称が清掃員なのはその時の名残だ。クソを掃除する者=清掃員という意味だ。

 

BiSHは2015年夏、日本最大のアイドルイベントTOKYO IDOL FESTIVALにも出演し、「BiSH -星が瞬く夜に-」を3曲連続で披露するなどして話題を搔っ攫うなど、業界の風雲児として注目を集めていく。

 

2015年の8月にはハシヤスメ・アツコとリンリンの2名が加入し、現在のメンバー6人の内、5人がBiSHに集う事となった。

 

そして2016年1月、新生クソアイドルBiSHはエイベックスから晴れてメジャーデビューする。恵比寿リキッドルーム(キャパ約900人)で行ったツアーファイナルで、サプライズとして発表された。

 

結成から1年も経たない快挙だ。メンバーがエイベックスでやりたい事も述べられたので見てみよう。

 

セントチヒロ・チッチ:

BiSH専用車を買ってもらって毎日家まで迎えに来てほしい

 

モモコグミカンパニー:

エイベックス本社の一番上から空を眺めたい

 

アイナ・ジ・エンド:

TRFの新メンバーに加わりたい

 

ハシヤスメ・アツコ:

廊下がある家に住みたい

 

リンリン:

ねずみのランドでライブがしたい

 

ハグ・ミィ:

パークハイアットホテルで暮らして、毎日違うウエルカムフルーツを食べたい

 

なんとも微笑ましい願望ではないか。リンリンの夢だった、ねずみのランドでライブをする日も近いかもしれない。

 

しかし最も破天荒なキャラのリンリンが夢見る少女みたいな可愛らしい事を言うのだから面白い。

 

メジャーデビューに際して、もはやクソアイドルではないという事で肩書は現在のキャッチコピーである「楽器を持たないパンクバンド」に変更された。

 

その前後にも中核メンバーであるセントチヒロ・チッチのダイエット企画失敗によるキャプテン降格事件とそれに伴う脱退騒動があり、また「あぶない熟女」担当のハグ・ミィが「家庭の事情」を理由に脱退するなど、BiSHの歩みは波乱に満ちたものだった。

 

チッチのキャプテン降格により、この時からBiSHはリーダー不在となる。この事件によるチッチの精神的なダメージは大きく、一時は脱退を考えたという。

 

「何も楽しくない、メンバーも渡辺さんもスタッフさんもお客さんも全員嫌いになって、全てがどうでもよくなった」「メンバーと一緒に練習するのも辛いからもう辞めるしかないかなって考えてましたね」と語るほど深刻なものだった。

 

当時、チッチをインタビューした飯田仁一郎も「正直彼女は辞めちゃうんじゃないかと思った」と述べている。

 

そんなチッチを救ったのはアイナだった。

 

きっとチッチならいつものチッチに戻るときがくるよ

 

いつか見返せるときが来るよ。チッチならそれができると思うから、もうちょっと頑張ってくれへん?

 

チッチが辞めたらBiSHが終わると思うから、いてくれないかな

 

アイナはそんな真剣な言葉をチッチに伝える事で彼女を闇から救った。

 

チッチはその時のことを次のように語っている。

 

<別に私一人が辞めてもどうってことないでしょ>って思ってたけど、今まで作り上げてきたBiSHまで終わってしまうかもしれないんだって、その言葉にハッとして。みんな嫌いだったけど、BiSHが終わるっていうのは私一人の問題じゃないので

 

こうしてBiSHの危機は乗り越えられた。

 

プロのライターも書いていたが、この「セントチヒロ・チッチのキャプテン降格事件」は確かにBiSH最大の危機だったと言っていいだろう。

 

またBiSHのオリジナルメンバーとして活躍したハグ・ミィが抜けた穴も大きかったが、それを埋めるべく渡辺淳之介は直ちにオーディションを実施。

 

そうして最年少かつ最後のメンバーとしてBiSHに加入したのがアユニ・Dだ。

 

根暗で友達もほとんどおらず、クラスメートから「陰キャ」「ケータイが友達」「ケータイちゃん」などと陰口をたたかれていたアユニは、YouTubeでBiSやBiSHの活躍を見て憧れていた。

 

学校が戦場になってクラスメートが死ぬ妄想ばかりしていた少女は、キラキラしたい、自分を変えたいという強い思いからオーディションに応募したのだ。

 

そして見事合格したアユニはすぐさま高校を中退し北海道から上京。かなりのコミュ障だったアユニは最初メンバーとまともに話せず、面倒を見るよう渡辺から命じられたチッチが間に入って通訳をするような状態だった。「チッチはやさしい」とアユニが言っていたのが印象的だ。

 

アイナの厳しい特訓により「覚えられません、つらいです」と泣きながらも必死に食らい付き、アユニは一人前のBiSHメンバーとなった。

 

なお、アユニの加入によりチッチの担当は「僕の妹がこんなに可愛いわけがない」から「見た目は真面目、中身は悪女、これでも彼氏は2人まで」に変更された。

 

アユニが最年少の妹キャラだったからだ。

 

アユニの加入により、グループも変化していく。チッチも当初は5人体制が崩れることに恐怖心を抱いていたが、アユニは希望に満ち溢れていて、皆にそのパワーが伝わっていったと振り返っているし、アイナも「ようやく最強になれる要素揃ったな」と言っている。

 

今でこそアユニは単独で武道館公演を行うまでに成長したが、グループに加入した当時はステージに1度もたったことの無い素人。

 

ただ、やはりダイヤモンドの原石のような輝きがあったのだろう。アイナも驚くほどのスピードで歌やダンスを覚えていった。

 

今に至る6人体制が完成し、ここからBiSHの勢いは増していく。

 

 

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2016年10月日比谷野外大音楽堂において、後に伝説と語られることになる「BiSH Less than SEX TOUR FINAL'帝王切開'」を開催。これが大きな転機となった。

 

BiSH始まりの曲とも言える「BiSH-星が瞬く夜に」でライブはスタート。

 

聴衆をいきなり熱狂の渦に叩き込むと、休む間もなくリンリン作詞で、リンリンの狂気の一端が垣間見える「ファーストキッチンライフ」を投入し、続けざまに「ヒーローワナビー」を放つ。

 

 今やらずどうすんの?

 時計見てもダメさ

 今やれば、ヒーローさ

 でも膝ガクガク

 サイコ― サイテー

 

 あの日の僕らは

 君の妄想をかき混ぜて

 孤独なスターを夢見てたんだ

 

 そううまくいかずに

 箱の中でもがいて

 ハッピーエンドを探してた

 ヒーローに憧れて 謳ってた

 

学生時代はイジメられたり、社会に出てからも中々上手く行かなかったメンバーが多かったBiSHに相応しい曲に思える。

 

妄想ばかりでスターを夢見ていた子たちが、勇気を出して一歩を踏み出すことで本物のヒーローになっていく。好きな曲だ。

 

ヒーローになりたいと歌った後は、アユニ・Dが作詞した「本当本気」

 

捻くれているようで素直さや真摯さも感じる中毒性の高い曲

 

 Seventeen まだ seventeen’s OK??

 まだSeventeen

 

 ああ終わらず 血まみれ 倒れて転生して

 神になるんだ僕はねっ

 

 本気出すのは今ではない

 嘘じゃない 知ってた?

 

 頭がおかしくなっちゃっても

 クズじゃない 知ってた?

 ここでやめちゃだめでしょ

 To die or 生

 

正直、何が言いたいのかよく分からないが、天才的だと思う。

 

DA DANCE!!で、作詞したモモコが「今日は嫌な事全部忘れて踊っちゃおう」と可愛らしく煽ると、野音に集った3000人もの聴衆が一斉に踊りだす。

 

メンバーの甘い歌声に応えて、聴衆のコールアンドレスポンスが野音に響き渡る。

 

壮観だ。

 

僕も二枚目秀才のメガネ君になりたいと心底思った。

 

「ぴらぴろ」もモモコの作詞曲。

 

 ぱーぴらぴーぱぴっぴぱぴらぱ

 ぱーぱらぴっぱぴっぴぱぴらぱ

 ぱーぴらぴーぱぴっぴぱぴらぱろ

 雑草がさっそうにぴらぴら

 

意味不明の歌に煽られて聴衆のボルテージは更に上がる。会場の熱気は最高潮だ。

 

こんな変な歌なのに何故か異常に沸いてしまう。モモコは天才かもしれない。いや明らかに天才だ。

 

続く「Primitive」の作詞はハシヤスメと渡辺の共作。切なげで感動的なナンバー。

 

 透かし絵の先の世界

 掴めるなら

 考えないで 信じてますか?

 

この部分が特に印象的だ。彼女たちは透かし絵の先の世界に行けたのだろうか?

 

そんな他愛もない問に答えを出す間もなく、次の「Is this call?」が始まる。アイナの作詞曲だ。

 

抒情的な旋律にメンバーの歌声が乗る

 

歌い出しはアユニ

泣きたい。会いたい。苦しい。甘えたい。

 

続いてリンリン

食べたい。かなしい。寂しい。怖いなぁ。

 

チッチ

いつもあさましい感じ

 

アイナ

 Is this call?? 

 心を食べる虫

 誰にでもいるよ

 もう食べられすぎちゃダメ

 

水を打ったように静まり返る野音に、アイナ・ジ・エンドの絶唱が響き渡る。

 

 

アイナの歌が、声が、波紋のように心にさざ波を立ててゆく

 

 

鳥肌が立ってくる

 

 

 

歌が心の深い部分に突き刺さる

 

 

 

 

僕の目から自然と涙が零れ落ちている

 

 

 

 

その後も「スパーク」「サラバかな」「MONSTERS」などの強力なナンバーが次々と披露され、本編はリンリン作詞の「beautifulさ」で終わる。

 

3000人もの観客がジャンプしながら天に向けて、トゲトゲダンスを踊る光景は圧巻だ。

 

熱烈なアンコールに応えて、BiSHの6人がバンドを従えて再登場する。セントチヒロ・チッチの歌い出しで始まる名曲中の名曲「オーケストラ」

 

「オーケストラ」の歌い出しはチッチ以外に考えられない。

 

天界から響いてくるような透明感のある澄んだ歌声に3000人が魅せられる。

 

チッチの虜になる。その神々しい姿はBiSHの悪女ではなく聖女そのものだ。

 

 

最高の歌と音楽を届けてくれるBiSHに、清掃員たちも愛をもって返す。

 

清掃員たちのサイリウム企画によるサプライズで客席が放射状に6色に輝く。その景色にアイナは驚き感動し歌いながら涙を流す。

 

そしてダブルアンコールの「ALL YOU NEED IS LOVE」

 

メンバー最年少のアユニは歌っている時から涙声で、曲が終わった後は重圧から解放されたのか、泣き続けていたのが印象的だ。

 

こうしてBiSHの野音ワンマン「帝王切開」は伝説となった。

 

 

 

公演を実際に観た音楽ライターや評論家の文章も抜粋して載せておく

 

音楽ライター: 平賀哲雄

 

全体的に人見知り、コミュ障、イジメられっこ気質、ワガママ、嘘つき、自己中、根暗、努力するのが死ぬほど嫌い……ネガティブ要素の集合体だったBiSHが、この1年でなんだかんだ言っても必死に練習を繰り返し、パフォーマンス能力や一体感の強度を高めてみせたのは凄いなと思いました。

 

<もう彼女たちはBiSの後継者でも、他の何者でもない……>

 

 その後、更なる感動の大団円となった「ALL YOU NEED IS LOVE」にて同公演は終了。いつまでも客席に手を振り続ける6人の表情は晴れ晴れとしており、リンリンの海外の子供みたいなテンションでの「せんきゅーべりまっち」といった感謝の言葉も手伝って、客席も清々しいほど笑顔満開。「以上、BiSHでした! ありがとうございましたー!」

 

 「We are BiSH!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 終演後、客席からは「感動した」「泣けた」「良かった」というやたらピュアでストレートな感想が次々と耳に飛び込んできた。

 

これだけのライブを見せられた直後にアレコレ難しい事を言う者などいない。それは彼女たちがすべての否定的な言葉と対峙しながらも、時にはもう無理だと、私には続けられないと自分の弱さに負けそうになりながらも、それでもBiSHを諦めなかった結果だろう。

 

もう彼女たちはBiSの後継者でも、他の何者でもない。自らの意思とその足で未来を切り開いていく、そしていつしか新時代のポップアイコン/ロックアイコンとして伝説となるグループ、それがBiSHだ。BiSHの伝説はBiSHが創る。そのストーリーにぜひとも注目してほしい。

 

音楽評論家: 柴 那典

ライブの空間が一つの“現象”として感じられるようなことは、そう多くはない。しかしBiSHが昨年に日比谷野外大音楽堂で行ったワンマンライブ『Less Than SEX TOUR FiNAL”帝王切開”』には、その匂いがあった。

 

僕はよく「サイリウムが“生きている”かどうか」という言い方をするんだけれど、この日の満員の会場には、握っている手の力強さがそのまま伝わってくるような、“生きている”光が揺れていた。

 

渦巻いている熱気に会場のキャパシティが追い着いていない感じがあった。そしてそれを生み出しているのは、間違いなく、「楽器を持たないパンクバンド」BiSHのメンバー6人がステージの上で繰り広げるパフォーマンスだった。

 

これまでで最も豪華なステージセットが組まれ、アンコールではオーケストラも登場したこの日のライブ。それでもやはり、その中心にあったのは歌とダンスだった。

 

2017年、BiSHのセールスや動員は間違いなく増していくだろう。そして多くのメディアが「ブレイク」という言葉でその現象を説明するだろう。

 

けれど、あの場に居た人には、その本質が単なる話題性とか人気とかじゃなく、あそこに渦巻いていた「よくわからない熱気」だということを知っているはずだ。

 

ステージから放たれる「もっと行きたい!」というエネルギー、そしてオーディエンスが呼応する「ならば一緒に」という興奮。それが混じり合って爆発していた。

 

アイドルカルチャーとパンクカルチャーが真っ向から混在するのがBiSHの魅力なのだが、この日は、それが筆者が観た中でも最もカオスな形で放たれていた。

 

言葉で説明しようとすると届かないような「エモさ」があった。だからこそ居合わせた人は何があったのかを語りたがるわけで、それが“伝説”とされるものの正体だ。 

中略

おそらくこの先BiSHが巻き起こす波はもう一段階大きなものになっていくはずだ。

 

伝説を目撃した音楽関係者はこう語っていた。

 

その通りになった。

 

BiSHの6人が放つ不安定ながらも圧倒的なエネルギー。

 

それに呼応して聴衆もヒートアップしていく。パフォーマーとオーディエンス、両者のエネルギーが激突し渦巻いてライブという特別な時間と空間を創り上げていく。

 

伝説のライブを創る上で演者だけでなく、聴衆である清掃員が大きな役割を果たしたのも見逃せない。

 

清掃員だけでなくEMPiERのファンであるエージェントやBiSのファンの研究員など、WACKのグループを応援するファンの熱量は凄いものがあると感じる。

 

WACKファンの「好きだ。応援する!」

 

この言葉にはいつも本気と気迫を感じる。

 

シングルならCDを何枚も買って、他のアーティストのライブ会場やフェスで配ったり、チケットを買って友人知人に配ったりしていた。

 

絵を描ける者はメンバーのイラストを描いて応援するし、楽器を弾ける者はグループの曲を弾いてSNSにアップする。

 

そんな特技が無い者でも文章を書いてブログやSNSで発表し、グループの状況を大勢に伝えるなど、創意工夫や手間暇を惜しまず布教に力を入れる。

 

感動を自分の中だけに閉まっておくのではなく、良い音楽を多くの人に伝えようとする。

 

驚いたのは、特典会はもちろん、ライブに1回も参加した事のない人であっても相当な熱量で応援している。そんなファンがたくさんいる。

 

またWACKファンは連帯感が強いと感じる。見ず知らずのファン同士が緩やかに連帯しつつ、一丸となってアイドルを上へ上へと押し上げていく。

 

感動的なライブを見せてくれるアイドルに全力で応えようとする。そんな雰囲気が心地よかった。

 

ただ、演者がパフォーマンスに注力し、ファンが熱烈に応援できるのはWACKの代表である渡辺淳之介の力も大きいと思う。

 

様々な工夫を凝らし、奇抜な仕掛けで話題をつくりながらアーティストを全力で売り込んでいく。現状維持+αで良いとは微塵も思っておらず、スピード感をもって物事を進めていく。

 

そういえば渡辺は「お前ら(BiSH)が本気なら、俺も本気でやる。死ぬ気で売っていく」みたいなカッコつけたセリフを吐いていた。

 

CARRY LOOSEが結成されて間もなく、無料チェキ撮影会「10000CARRY CHEKI」を全国のタワーレコードで開催。

 

僕自身は参加できなかったが、遊び心満載のそのイベントにはウキウキした。SNSのレポを見ているだけで楽しかった。低予算で出来る割に、宣伝効果の大きなイベントだと思う。

 

また、時に大きなリスクを取ることも厭わない。

 

以下は、約7000人を動員した幕張メッセイベントホールでの公演についての渡辺へのインタビューから引用(黒丸はインタビュアーの発言)

 

そもそも今回ツアーファイナルの会場に幕張を選んだのはなぜだったんですか?

 

ずっと人気よりも小さな会場でやってきたのですごく大きな会場でやりたかったんですよね。じゃあどうしようって考えてたときにたまたま幕張を押さえることができて、それが去年の夏ぐらい。

 

去年の夏の時点で幕張イベントホールが埋まる目算があった?

 

なかったです(笑)。まだ日比谷野音もやってなかった時期だし、むしろ直前まで埋まるわけないと思ってて。だから会社的にもかなり危険な賭けだったんですけど、BiSHの勢いを信じて、もう思い切って飛び込んでしまおうと。

 

失敗したらWACKの存続に関わるくらいの挑戦だったわけですね。

 

ホントそうですよ。なんで幕張でやろうと思ったんだろう。無事に終わったんでもういいんですけど(笑)。

 

 

BiSHの最大動員数がまだ2000人から3000人程度の時に、倍以上のキャパの会場を押さえるなんてマトモな神経ではない。

 

これ以外にも、巨大台風が接近し他のアーティストが次々と公演を中止する中、BiSやギャングパレードの公演を強行して批判を浴びていた。

 

強引で独善的な印象も受けるが、「この日のライブのために生きてきた人のために、簡単に中止にはできない」みたいな事を言っていた。

 

リスクを嫌う硬直化した組織には出来ないと思う。

 

ワンマン社長の渡辺だから出来ることだ。彼の音楽に懸ける情熱には凄いものがある。元々、BiSHの前身であるBiS(第1期)を始めたのは、松隈ケンタの音楽を世間に売りたいという強い想いからだ。

 

地元の福岡でバンドをやっていた松隈ケンタは上京し、エイベックスからメジャーデビューするも売れずにバンドは解散。

 

生活のためアルバイトに明け暮れている時に出会ったのが渡辺だ。当時、渡辺は音楽関係の企業でインターンとして働いていた。その後、つばさレコーズに入社し、松隈ケンタの曲を手掛けていく。

 

松隈の音楽に惚れ込み、彼の音楽を聴いてもらいたいという想いは強かったが、最初は中々上手くいかなかった。以下は2012年のインタビューから抜粋

 

あと、これは今も戒めにしているんですけど、いい曲があればそれだけで売れるっていう幻想が自分にはあったんですよね。

 

松隈さんの曲はいいんだから、出せば必ず売れるし、ラジオ局も流してくれるはずだって。その幻想が強かったので、こんなに聴いてもらえないんだっていうことが本当にショックだった。

 

こんな苦い経験から、話題性のあるプロモーションを意識するようになった。

 

松隈は、売れているアーティストには表から見えるか見えないかは別にして大概、渡辺のようなプロデューサーがついていると発言している。

 

音楽業界におけるWACKの隆盛も、元をたどれば松隈ケンタを売りたいという渡辺の強い情熱から始まった。

 

損得を超えた感情がそこには在る。

 

渡辺が、時に採算を度外視した大胆な施策をうてるのも、そんな強い情熱があればこそだろう。

 

プロモーションは渡辺淳之介に任せて、しっかり応援していれば報われるという信頼感があるから、ファンも全力でアイドルを応援できるのだと思う。

 

 

日比谷野音でのライブを成功させBiSHは更に勢いに乗る。

 

アイナが喉の手術のため一時活動休止となるが、その間にもメンバーは各々、歌とダンスに磨きをかける。

 

ダンスがど下手で、上手くなりたいと思ってなかったモモコも、めちゃめちゃ頑張って上達した。

 

そして2017年7月に行われた幕張メッセイベントホールでの公演「BiSH NEVERMiND TOUR RELOADED THE FiNAL “REVOLUTiONS”」は、全席SOLD OUT

 

約7000人を動員し、表現力を増した歌と一体感を高めたダンスで聴衆を魅了した。

 

YouTubeにもアップされているがこの日の「プロミスザスター」は圧巻だ。

 

アイナやチッチ以外のメンバーの歌は格段に向上しているし、また一糸乱れぬダンスに圧倒される。

 

中でもアユニの歌唱力の向上には目を見張るものがある。

 

アイナとチッチの2枚看板にアユニが割り込んきたのはこの頃からだろう。

 

アユニの成長スピードは驚異的で、彼女の凄みのある歌なしでは「PAiNT it BLACK」や「My Landscape」「stereo future」などの壮大な世界観は構築出来なかったのではないか?

 

そして2017年12月にはミュージックステーションに出演。

 

BiSHがとうとう全国に知れ渡ることになるも、AKB48や乃木坂46、モーニング娘などの正統派アイドルに見慣れた一部の視聴者の反発は凄かった。

 

ネット上では「誰だよ、これ」「地下アイドル?BUSU?」「歌、下手すぎだろwww」と叩かれる事になる。これが現在まで続くBiSHの生歌下手問題の始まりだ。

 

一般層の一部から強く叩かれながらも2018年にはラウンドワンやキリンレモンの全国CMに起用されるなど、BiSHはアイドル業界に革命を起こしつつあった。

 

ミュージックステーションへの出演や全国CMなどへの起用はBiS(第1期)も出来なかった快挙だ。

 

意外なことだが、BiS(第1期)を応援していたファン(研究員)とBiSHのファン(清掃員)はあまり被っていない。

 

BiS(第1期)は運営やファンが目立ちすぎていた。ある意味ファンが主役だったとの事だ。以下、渡辺へのインタビューから引用

 

BiSが与えた影響としては、運営&お客さんが目立ちすぎるようになってきたって面もあると思うんですけど。

 

いまウチ(BiSH)はもうあきらかに「お客さんは主役じゃない!」って言い放ってるグループだと思うんですけど。リフト(オールスタンディングのライブ会場で客が他の客を高く持ち上げる行為)が禁止だったりとか。

 

あと最たる例だなと思うんですけど、誕生日に近いライブとかになぜかお客さんが演出を加えてくるんですよ。

 

そういう文化ですよね、アイドル界は。

 

こないだも「○○さんを呼んでます、ゲストパスを出してください。で、ステージ上に登場させたい」って言われて、「おい、ちょっと待って。なんでステージ上の話をお客さんに決められなきゃいけないんだ!」と。

 

ステージ上のことはお客さんに関わらせたくないんですね。

 

ステージはステージ、客席は客席、線は引きたいですね。

 

お客さんが暴走するのはBiSによって生まれた文化だと思ってるんですけど、渡辺さんはそこには一線を引きたいわけですね。

 

そうですね。BiSによって生まれたのかもしれないですけど、BiSでも、それこそ「生誕で●●さんを呼んでステージに上げたい」って言われて断ったんですよ。

 

「ふざけんな、おまえらがフロアで何かやることに対して俺らは文句は言わない。だけど、なぜおまえらが勝手に●●さんを呼んでメンバーの生誕を祝わせる演出をするんだ!」って。

 

だから基本的にスタンスは変わってないんですよ。やるんだったらフロア上で勝手にやれ、と。それはたしかにお客さんの自由なんですけど、ステージ上は聖域だっていうことで。

 

たぶん結構セットリストとか伝えちゃうアイドル運営がいるんだろうなと思うんですけど、僕たちは公開したことはないし、BiSのときから徹底してやってはいるんですけどね。

 

自由にさせてくれるところがあるから、そういうものだと思ってるんでしょうね。

 

そんなヤツらが売れるわけないじゃないですか。でんぱ組も絶対に教えてないですよ。だから、BiSが弱いものが好きな人たちの集合体だとしたら、BiSHっていうのは強いものが好きな人の集合体にしたいんですよ。

 

客層もあんまりかぶってないですよね。

 

でんぱ組とかは多分最初は弱い側だったんですけど、強い側にシフトしたんですよね。だから、こっちじゃないとダメなんだなと思って。

 

それが一般に届くようなやり方なんじゃないか、と。

 

自由に振る舞うのが好きなファンはBiSHからは去っていったのだろう。

 

そして2018年5月 BiSが最後のライブを行った横浜アリーナにとうとうBiSHが立つことになる。

 

チケットは即日ソールドアウト。

 

横浜アリーナを約12000人の清掃員が埋め尽くした。

 

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BiSの解散ライブで全国から集結した研究員の総数は約8000人。

 

BiSの二番煎じとして始動したBiSHは名実ともにBiSを完全に超えた。伝説のアイドルグループBiSを超えその先へ。

 

BiSH横浜アリーナ公演のタイトルは「BiSH "TO THE END"」だ。

 

BiSHは終焉の更に先へと進んでいく。

 

 

 

2018年9月にはセントチヒロ・チッチ、アイナ・ジ・エンドが「夜王子と月の姫/きえないで」でソロデビュー。

 

同日、アユニ・Dのソロプロジェクト「PEDRO」の始動が事前告知なしで発表される。

 

アユニがボーカル・ベースを務め、サポートメンバーにギター・田渕ひさ子、ドラム・毛利匠太を迎えスリーピースバンドとして始動。

 

PEDRO結成の経緯は、元々バンドを率いていた松隈ケンタが圧倒的な速度で成長するアユニの才能に目をつけたのがキッカケだ。

 

当初はあまり乗り気でなかったアユニだが、BiSHの活動と並行しつつベースも猛練習して様々な音楽を吸収。独自の個性を発揮していく

 

アユニのPEDROでの活動に懐疑的だったファンもいるかと思う。恥ずかしながら僕もその1人だ。

 

BiSHありきのバンドで、有名なギタリスト田渕ひさ子を連れてきて箔をつけただけだと思っていた。これを機に謝りたい。僕は見る目がなかった愚か者だ。ごめんなさい。

 

PEDROは今や単独で武道館公演を行うまでに成長した。2021年2月13日にそれは開催される。武道館でのワンマンライブはWACKアーティストとして初の快挙だ。

 

しかもアイドルグループではないPEDROが先陣を切った。チケットは即日ソールドアウト。PEDROの人気は本物だった。BiSHありきの単なる企画バンドならこれほど支持されるわけがない。

 

アユニの音楽的な才能はアイナよりも大きいのではないか?そう思う時がある。

 

BiSHの「stereo future」などで心震わす絶唱を聴かせたかと思えば、PEDROではより自然体でどこか気だるげに歌う。

 

「浪漫」や「感傷謳歌」「へなちょこ」など好きな曲がたくさんある。個性的でクセのある歌詞ばかりなのに、気にならないどころか不思議な中毒性がある。

 

アユニが奏でるメロディーと歌声が心に優しく染み込んでいく。気が付けば「浪漫」と「感傷謳歌」を1日中ひたすらリピートしていた。

 

 

 

結成からわずか5年強、キャパ100人に満たない小さなライブハウスからスタートしたBiSHは今や紅白歌合戦への参加や東京ドーム公演も夢ではない所まで来た。

 

アユニ無くしてBiSHはこれほど大きな存在にはならなかったと思う。

 

アイナに匹敵する天才的な歌姫・藤川千愛がいて他のメンバーの歌唱力も高かった、まねきケチャが武道館までしか行けなかった事を考えると、アユニのいないBiSHも横浜アリーナが限界だったような気もする。

 

アイナ・ジ・エンドとアユニ・D、傑出した歌唄いが2人もいるグループなんてほとんど無い。

 

 

 

BiSHの勢いは横浜アリーナで止まるどころか更に加速する。

 

2018年12月に幕張メッセ9~11ホールで開催された「BRiNG iCiNG SHiT HORSE TOUR FiNAL"THE NUDE"」では自己最高を更新する1万7000人を動員

 

音楽専門WEBサイトは公演の模様を次のように表現した。

 

BiSHの果てしない進化に驚きを禁じ得ない。ホールツアーの集大成となる史上最大規模のワンマン『BRiNG iCiNG SHiT HORSE TOUR FiNAL"THE NUDE"』が12月22日、幕張メッセ9~11ホールで開催された。BiSH初のセンターステージ、総勢29名のストリングス隊とバンド編成を従え、圧巻のライヴで1万7,000人を飲み込んだ。

 

スタートの「stereo future」からいきなり圧倒される。度肝を抜かれる。壮絶な歌唱力に、芸術的なダンス。言葉を失う。BiSHの表現力はとんでもない領域にまで達していた。

 

驚くのはまだ早い。この日のハイライトとなった「My landscape」

 

センターステージでの半透明の紗幕に画像を投影した演出に、メンバーの歌とダンス、茫漠たる荒野を想起させる壮大な音楽が合わさると、見る者の心を奪う幻想的な光景が現出する。

 

そして紗幕が一気に落とされると同時

 

 

アイナ渾身の

                     

 

 

「マーーーーーイランドスケープ!」

 

 

 

アイナの咆哮に圧倒され観客は誰も身動き出来ない

 

 

 

広大な幕張メッセの時間が止まったような、世界が停止したような不思議な感覚。人間業とは思えなかった。

 

アイナ・ジ・エンドはただの歌手ではない。超人だ。

 

これ以上のライブなんて果たして出来るのかと、素人が余計な心配をしてしまうほど最高のライブだった。

 

 

 

年は明け2019年、BiSHの勢いはとどまることを知らない。

 

4月から7月にかけてLiFE is COMEDY TOURが開催

 

このツアーの主役はハシヤスメ・アツコだった。他のメンバーが落ち着いた感じの衣装なのに対し、ハシヤスメだけ何故かピンク色のど派手な衣装。

 

メインディッシュではなく、文字通り箸休め的な存在だと思っていたから、なぜ主役?と疑問に思ったが、そんな思いはライブが始まるとすぐ氷塊した。

 

スタートはハシヤスメのソロ曲「ア・ラ・モード」のMVから

 

シリアスな音楽にハシヤスメ作詞のクセの強い歌が乗る。

 

ステージ中央に置かれた大型モニターに、マッチョな男たちが何人も登場する奇怪なMVが映し出される。強烈な洗脳ソングの出来上がりだ。

 

 今夜はようこそ

 止められないよミュージック

 ハシヤスメモード

 終わらないだろ

 

いつの間にか口ずさんでいる

 

 不思議なワールドへ

 逃げられないよミュージック

 染めてくよダンシング

 止まらないだろ?

 

逃げられないかもしれない

 

 こころのビキニを着てみ

 晴れ晴れな気分になんだろ

 慣れないリズムにまかせ

 まだ見ぬ快感さ

 

この身をまかせたくなる

 

 

清々しいほどに馬鹿馬鹿しい「ア・ラ・モード」が終わり「DiSTANCE」が始まる。

 

不気味なメロディーに奇妙なダンス。BiSHの放つ禍々しいオーラに圧倒される。

 

 

最高で最幸 

 

けど最凶にして最悪 

 

 

オーケストラやプロミスザスターで見せるエモさ溢れる美しい姿は偽りで、これが真のBiSHなのかもしれないと何となく思った。

 

「FREEZE DRY THE PASTS」「遂に死」などのダークな曲を投入しつつも、この日の主役はやはりハシヤスメだった。

 

格段に切れ味が増したコントで聴衆の笑いを誘う、メンバーとの掛け合いは芸術的ですらあった。

 

 ところであなたは何派?

 私はハシヤスメ派

 まわりを引き立て上手で

 まわりはもうメロメロ

 

僕はもうメロメロだ。ハシヤスメ派だ。

 

昨日までは「おにいたんず」だったが、今この瞬間から「ハシックス」だ。

 

こんな感じで推し変しそうになったが、なんとか耐えた。

 

そもそも僕は箱推しだった。一応アイナ、アユニ推しと言っていたが箱推しで終わらせるのも面白くないから言っていただけだ。

 

ただこの公演を見てハシヤスメの魅力にやられて、気持ちがグラついた。

 

正直、それまでは面白くも無いコントをする、空気の読めないメガネの人くらいの印象しかなかった。

 

けど、ハシヤスメ無くしてBiSHは成り立たないと悟った。メンバー6人の内、5人はどちらかと言えばダークな雰囲気。

 

それに対しハシヤスメだけ突き抜けて明るく陽気なキャラクター。彼女がいる事でバランスが保たれ、エンターテイメント性の高いグループになっている。

 

もしハシヤスメがいなければBiSHはもっとダークなグループで、一般受けし辛いマニアックな雰囲気を醸し出していただろう。

 

ハシヤスメ・アツコは、周りの引き立て役なんかではない。BiSHに欠かせない重要メンバーなのだ。

 

しかしBiSHは不思議なグループだ。歌やダンスの中心は明らかにアイナやアユニなのだが、メンバー1人1人がBiSHを体現していて、誰1人欠くことが出来ない。

 

誰か1人でも欠けてしまえば、それはもうBiSHではないと感じさせるほどの存在感がある。

 

ただ、これは最初からそうだった分けでは無い。グループが成長してきた過程でそれぞれが自分の個性を伸ばして自分だけの役割を確立してきた。だからBiSHは最強のグループに成れたのだろう。

 

ハシヤスメも初期は美人の切れキャラだったが、自分の役割はこれじゃないと思って、立ち振る舞いを変えてきた。コントをやり出すなど、明るく面白いイメージを確立してきたとの事だ。

 

そもそもハシヤスメ・アツコはなぜ芸能界を目指したのか?売れる事に対して最も貪欲で、野心家なのが彼女だ。

 

BiSHに加入して1年も経たない2016年1月、BiSHがまだ地下アイドルに毛が生えた程度のグループだった頃から、武道館や横浜アリーナのステージに立ちたい。そして代々木体育館、東京ドームに行きたいと壮大な目標を口にしていた。

 

夢が叶ってくると、今度はジャスティンビーバーに見つかって世界に行きたい、今からリプライを送ると言い出す。

 

夢物語というか妄想としか思えないが、東京ドームも手の届く所まできて、世界的な存在にも成りつつあるBiSHを見ると、まずは目標を口にして本気で目指す事が大切なのだと思い知らされる。

 

ハシヤスメ自身は歌やダンスが抜群に凄いわけではない。オーディションもエイベックスなどの大手には通らなかったし、中堅グループにも中々受からない。

 

BiSHのオーディションも一度は書類選考すら通らずに落とされている。普通だったら心が折れて諦めそうなものだ。一体何が彼女を突き動かすのか?

 

2016年のインタビューで、ハシヤスメは中学生の時にイジメに遭い、先生からも好かれず暗く苦しい学生時代を過ごしてきた。長く重い3年間だった。その反動もあって芸能界などの華やかな世界に憧れるようになったと語っていた。

 

高校卒業後、福岡に住んでいたハシヤスメは家に置き手紙だけのこして、全財産の3万円を握りしめて単身東京へ向かう。無謀なのかもしれないが、この行動力は凄い。とても真似できない。

 

BiSHのメンバーは学生時代にイジメられていた者が多い。チッチもそうだし、アイナも無理やり木に登らされたり、コンパスで刺されたりなど犯罪としか思えない目に遭っていた。

 

モモコは著書の中でBISHというグループの事を「一人ひとりがまったく違う人生を歩んできた」「それぞれが強めの色をもっている」「別々の道を歩んできた女の子たちがあるとき偶然交差点ですれ違う」そんな子たちの集まりだと言っていた。

 

まったく違う人生を歩んできた子たちを結びつける強い絆

 

それは多くの人に自分を認めさせたい、見返してやりたいという強烈な承認欲求なのかもしれない。それか社会に対するルサンチマンか。

 

大なり小なり、根底にそんな暗い思いがあるのではないか?

 

だからDiSTANCEなどのダークな曲では、不気味なオーラで見る者を圧倒する事ができるのだ。

 

なおLiFE is COMEDY TOURの位置づけをアイナは次の様に語っている。

 

2万人近くを動員した幕張メッセの壮大かつ完成されたライブに比べて、このコメディツアーは物足りないのではないかと問う音楽ライターに答えたものだ。

 

「幕張より今のほうがいいライヴをしてるっていう思いがあります。それに今はみんなが個人を鍛えてる時期なんです。

 

チッチの自主イベント、アユニのPEDRO、モモコの文章、リンリンの表現力、ハシヤスメのコントだって。

 

個人の強度がどんどん上がってるから、間違いなく良くなっているし、何よりあのときより楽しいんです」と語った

 

確かにこのコメディツアーは最高に楽しかったし、グループが新たなフェーズに入ったと感じるものだった。

 

表現の新たな地平を切り開き、果てしない進化を続けるモンスターグループ。それがBiSHだ。

 

天才たちが集結するこの怪物グループをメディアも放っておくはずがない。とうとう地上波の人気番組「アメトーーク!」でBiSH特集が組まれる。

 

過去に「アメトーーク!」がアーティスト単体で取り上げたのは、長渕剛、Perfume、B’z、Mr.Childrenの4アーティストのみ。

 

BiSHは日本を代表する錚々たるアーティストのラインナップに加わる事になったのだ。

 

BiSHの応援団としてノブ(千鳥)、稲田直樹(アインシュタイン)、奥田修二(学天即)、徳井健太(平成ノブシコブシ)、関太(タイムマシーン3号)などの芸人が集結し、BiSHに対する熱い想いを語る。

 

小さなライブハウスで歌い踊っていたBiSHが想像もつかない場所まで来たのを見て胸が熱くなった。

 

音楽業界では既に知らぬ者の無い存在だったが、いよいよ一般層にまでその存在が浸透していく。

 

2019年9月には大阪城ホールでワンマンライブ「And yet BiSH moves.」を開催。

 

関東圏以外のアリーナ級の会場でワンマンライブを開催するのは初だったが、12000人を動員し勢いを見せつける。

 

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YouTubeでも公開されているが、この日のハイライトの1曲となった「FREEZE DRY THE PASTS」は必見だ。

 

 

 

照明が落とされ闇に染まる大阪城ホール。ステージ上の巨大な液晶画面に幾千幾万もの星が映し出される。

 

無数の星が煌めく闇

 

その中心にいるのはリンリン

 

椅子に座っている

 

他の5人は死体のように床でのたうち廻る

 

 冷静保っていかないでお願い

 君のこと食べてみたい

 

ノイズのようなメロディーに合わせてリンリンが歌う。呪文のように。

 

 言われないよWoah 古今東西の

 

叫ぶように歌う

 

色とりどりのレーザーが乱舞する

 

中空に巨大な月が浮かび禍々しい光を放つ

 

 

暗い情念のような何かが波動のように広がり全てを覆っていく。

 

身動き出来ない。恐怖すら感じる。

 

 

 

リンリンとは一体何者なのか?天使なのか?それとも悪魔か?

 

まともに考えても答えが出る気がしないから、考えるのは止めた。

 

ただ、オーディションを受けにきたリンリンを欲しいといったのはアイナだったはずだ。天才は天才を知る。

 

私(アイナ)リンリンとは似てる部分が多くて互いにリスペクトしてるから

天性なのか好みなのかわからないですけど、ここでこれをやれば格好いいっていうのがわかってるんですよね。それを考えずにやってしまえる

 

アイナのリンリン評だ。

 

またリンリンの作詞は心の深奥に触れてくるような独特な質感がある。

 

有名な「beautifulさ」はもちろん「ファーストキッチンライフ」や 「VOMiT SONG」など心に直に刺さってくるような感じがする。

 

理由は分からないし、あれこれ分析するのも野暮だろう。

 

 

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今や国民的アイドルグループに成り得る一歩手前の存在、BISH。その象徴であり体現する人物は、絶対的なセンターのアイナ・ジ・エンドだとずっと思ってきたが、この考えは浅はかだった。間違っていた。

 

BiSHに中心なんて無い。各々が体現している。1人1人がBiSHそのものだ。強烈な個性を持つ6人が奇跡的なバランスを保つことにより、BiSHは成り立っているのだ。

 

かつてこれほどの天才たちが集結したグループがあったか?いや無い。

 

誰も彼女たちを止める事なんてできない。

 

もっと上 更に上へ

 

遥かなる高みへと昇っていくようにみえた。

 

 

 

しかし2020年 世界は一変した。

 

中国の武漢で発生した新型コロナウイルスが、2020年2月から本格的に日本でも流行し始め、社会経済活動は大きな打撃を受ける。

 

ライブハウスでクラスターが発生したことで、ライブやフェスは危険というイメージが広がり音楽業界は深刻なダメージを受けた。

 

BiSHを含むWACKグループは「WACK TOUR 2020 "WACK FUCKiN'PARTY"」の途中だったが2月24日のZepp Sapporo公演を最後にツアーを中止した。

 

大きな収入源になってきたライブが出来ずWACKも大損害を受ける。さすがに危ないんじゃないかと心配したが、初のクラウドファンディングを実行してファンの力を借りる事で難局をひとまず乗り切る。

 

WACKのクラウドファンディングの結果を一部載せておく。

 

【WACK TOUR 2020 (BiSH他)】出来なかったライブをリベンジ!

 総額 58,579,781円

(支援者数5551人。目標金額の1171%)

 

【PEDRO】の全国ツアーのリベンジ

 総額 20,777,657円

(支援者数2941人。目標金額の692%)

 

BiSH:モモコのエッセイ本完成までをお届け

 総額 52,727,050円

(支援者数4401人。目標金額の2636%)

 

目標金額を遥かに上回る巨額の支援金が集まり、WACKファンの熱量の高さを見せつけた。ちなみに僕もリベンジライブのプロジェクトにゴールドコースで応募し1,2000円を支払った。

 

しかし、モモコのプロジェクトに対する支援金は凄い。

 

「アメトーーク」で、モモコはBiSHの中でもっとも人間らしい、他の5人は超人だと紹介されていた。

 

モモコはBiSHに入るまではステージに上がった経験が無く、内向的な文学少女で人と深く関わることを避けてきた。また運動神経が良い分けでもない。アイドルとしては落ちこぼれ同然。

 

そんな少女が迷い傷つき、諦めそうになりながらも努力に努力を重ねて、光り輝くアイドルに成ろうとした。

 

そして歌と踊り、またその詩的な言葉をもってBiSHを体現する存在になった。

 

その成長ストーリーに共感しない者などいないだろう。

 

 

 

主要な活動であるライブが出来ず、BiSHの歩みも停滞を余儀なくされるが、そんな中でもメンバーは、個々のインプットの時間に充てたり、雑誌などのインタビューに積極的に出るなどしてメッセージを発信する。

 

それを強く後押しするのが鬼才・渡辺淳之介が率いるWACKだ。

 

4月13日にTVアニメ「キングダム」のオープニング・テーマ「TOMORROW」を配信限定でリリース。

 

楽器を持たないパンクバンドであるBiSHが楽器を携え、渾身のパフォーマンスを披露するMVを公開。

 

湧き上がる不安と戦い、強く大きなものに立ち向かう。大切なものを守り抜く覚悟を見せる。

 

7月8日にはベストアルバム「FOR LiVE -BiSH BEST-」を発売。収益全額をワンマンライブやツアーをやってきた、全国のライヴハウスに寄付するという取り組みが共感を呼び、初週4.9万枚を売り上げ、オリコン週間アルバムランキングで初の1位を獲得。

 

また7月22日にリリースメジャー3.5thアルバム「LETTERS」は初週55,959枚を売り上げて、同じく1位に。

 

「LETTERS」についてセントチヒロ・チッチは次のように語っている。

 

「元々、シングルを出す予定だったんですけど、(新型コロナウイルスの影響で)世界がこういう状況になった時に大好きなライブができなくなってお客さんとも会えなくなって、すごくもどかしい日々の中で『無力だな』って感じていたんです。

 

でも、『待っていてくれる人たちのために何かをする』っていうのがBiSHらしさかなと思って、急遽3.5枚目のアルバムとして加えて作ろうということになりました。だから、今のBiSHの気持ちとか思いが詰まっています」

 

アルバム発売によるリリースイベントやそれに付随する特典会が無いにもかかわらず達成したこの快挙は、BiSHのメッセージが幅広い層に届いた結果だ。

 

アイドル業界のみならず音楽業界そのものに旋風を巻き起こす新興企業WACK。

 

センセーショナルなプロモーションにばかり目が行くが、代表の渡辺はいつだって幅広い層に音楽を届けようとしてきた。

 

BiSHのデビューアルバム「Brand-new idol SHiT」の収録曲すべてを、リリース前にまさかのフリーダウンロード。

 

その後も既発アルバムを1日限定で300円という破格の条件で配信するなどしてファン層の拡大に努めてきた。

 

また2015年8月26日にはZepp Tokyoにて「TOKYO BiSH SHiNE」と銘打った単独ライブを開催。これは8月1、2日に行われた、アイドルフェスの2日目に出演予定だったBiSHが突如、出演キャンセルとされた措置に対抗して開催した振替公演だ。実質無料の神イベントだった。

 

2700人のキャパに対して集まった聴衆は1400人。この時のBiSHはまだそこまでの動員力は無かった。ガラガラになるのは分かり切っていたが、にもかかわらず大きな会場でライブをやる決断をする渡辺は普通ではない。

 

2019年11月に会場の手配ミスにより松山公演が中止となった際も、別の日に同様のフリーライブを開催するなどしてファンが離れないようにする。

 

また幕張メッセや大阪城ホール公演のハイライトとなるような曲を数日後には惜しげもなくYouTubeで公開するところにも好感がもてる。ライブに行けなかった人たちへのケアも忘れない。

 

2020年2月以降はコロナ禍によりライブもままならなかったが、10月からはBiSやEMPiREなどが観客を入れたツアーを開催。

 

感染対策により、会場のキャパシティーが通常の50%に制限されているため1日で昼と夜、2回の公演を行う。

 

またコロナ禍では医療や介護の関係者など、他県への移動を制限されている人もいる。そんな人たちのために、カメラを入れてライブを配信するなどやれる事をやる。

 

その際、特典会を全て止めたのは感染予防だけでなく、アーティストの疲労を最小限に抑える目的もあると思う。

 

利益率の高い特典会を止めるのは大きな痛手だろうが、観客になるべく良いパフォーマンスを見せたいのだと思う。

 

売っているのはあくまで音楽でありパフォーマンスだという思いが強いのではないか?

 

加えて、事務所の姿勢とBiSHなどの所属グループが発信するメッセージの間に乖離がないようにする意図もあるかもしれない。イメージ戦略の一環だ。

 

特典会でのチェキ撮影などは現場に行かないと出来ない。

 

しかし今はライブに行きたくても行けない人が沢山いる。医療、介護職以外にも、高齢の親族と暮らしている人。家族に反対されている学生。リスクの高い持病のある人。

 

また地方などでは周囲の目を気にして都市部への移動を自粛せざるを得ない人もいる。そんなの無視すれば良いと言うのは強者の論理だ。

 

コロナ禍の渦中にあって、ライブに自由に行ける人はそれだけで恵まれている。相対的な強者と言って良いだろう。

 

そんな中、現場に行った人しか参加できない特典会をやれば、BiSHなどが発信してきたメッセージと齟齬が生じてしまう。

 

公演に1つも参加できない人が結構な数いる一方で、全公演に参加してそのうえ特典会でメンバーと楽しく話せる人がいる。疎外感が生まれる。

 

弱者に寄り添うメッセージを度々、発信してきたBiSHのスタンスと矛盾が生じてくる。音楽が無価値になるとは思わないが、多少色褪せてしまう感は否めない。

 

WACKが指向するのは、一部の強者にのみ消費されて良しとする音楽ではなく、大衆に寄り添おうとするものだと思う。現在、特典会的なものは在宅でも参加できる、抽選によるオンライン会話くらいしかやっていないはずだ。

 

弱者に寄り添いながら、なるべく多くの人に音楽を届けようとするその姿勢が、WACKがファンの心を掴んできた理由だろう。

 

BiSHが歌や音楽、インタビューなどで発信するメッセージと、それを売り込むWACKの姿勢が一致しているから、メッセージがダイレクトに届いて感動するのだと思う。

 

 

 

 

 

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中でも8月にZepp Tokyoで無観客で生配信された「TOKYO BiSH SHiNE 6」には強いメッセージ性を感じた。

 

BiSHのライブはメンバーだけでなく聴衆がいる事で成り立っている部分も大きい。

 

無観客でしかも配信限定ライブだと、さすがに物足りないんじゃないかと思ったが、鬼気迫るパフォーマンスにそんな不安は一瞬で消し飛ぶ。

 

「TOMORROW」「MORE THAN LiKE」で鬼神のごとき気迫で歌い踊る6人に圧倒される。畏怖の念を覚える。

 

無観客で簡素なステージだからこそBiSHの本質が露わになる。

 

「LETTERS」の歌詞が現実とリンクして哀しみと喪失感が襲ってくる。

 

 あまりに突然に世界が

 予告もなく変わり果ててしまって

 

本当に何もかも変わってしまった…

 

 ダサい姿も全部晒そう

 あなたのいるこの世界守りたいと叫ぶ

 

 見えない明日は待たない

 今もあなたの無事をいのる

 絶対距離は遠くないんだ

 今も近くにあるんだ

 

強がるわけでも怯むわけでもない。自然体で、けど強い意志をもって気持ちを届ける。歌が心にじんわり染み込んでいく。温かい気持ちになる。

 

「スーパーヒーローミュージック」

 

 僕を救ってくれたスーパーヒーローは

 永遠に鳴り止まない音楽たち

 

 この小さな惑星の隅っこで

 僕らは生きてるんだ

 匙を投げたならすぐ拾えばいいだろ

 今の僕は少し強くなってると

 信じてみたいもんです

 

 そうだ 痛みも乗り越えてきたんだ

 過去があって今があるさ

 素晴らしき人生、ぶちかましていくのさ

 

僕たちを激励し勇気をくれる存在。それがBiSHだ。スーパーヒーローだ。

 

「サラバかな」では更に力強く

 

 日々毎日に 連れ立って 

 仮面をつけられ弾けて

 

 君は今にも 息絶えそうに

 代わりにもがいて

 

 前進していく

  少しづつ

 

 此処ぞと踏み込む 徒花の道よ 

 是までの堰を外して いこう上

 

 散りゆく午後に わずかな光が 

 醜い跡地に 紅誘うと この手を眺め

 

 ハシヤスメ

 散りゆく午後に わずかな光が

 汚い景色に 藍の気引かれる

 

 追うとなく添うなく 息吹が芽生え 

 僕の代わりに均して

 

 アイナ

 途方にくれて歩いていく 

 それには叶わない

 

 モモコ

 夢なら覚めぬのに 幾多困難の日々 

 

 リンリン     

 どこまでいこう 終幕へ

 どこへ行こうか? 

 

 チッチ

 サラバかな そりゃないな

 まだ中途 だから

 虚空に手を伸ばす

 

 アイナが

 

 その手を

 

 閉ざされた瞳が開く

 

 離さないよう

 

 手が伸びてくる

 

 

 これからも共に

 差し伸べられる手

 

 時を縮めよう

 その手を掴む

 

心と心が一つになるような感覚

 

ただの錯覚か、それとも白昼夢でも見ていたのか…

 

そう感じさせるほどの強い想いが、歌と踊りには込められていたのだろう。

 

 

BiSHについて行こうと思った。

 

 

 

 

ここ数年で応援していたアイドルグループが解散するなど、悲しい出来事がいくつもあった。

 

2019年12月にはファーストサマーウイカがリーダーだったBILLIE IDLEが5年にわたる活動に終止符をうった。

 

ウイカのカッコ良さと迫力のある歌に惚れて、武道館に行ける実力があると思っていただけに落胆した。

 

最終公演はマイナビBLITZ赤坂。キャパ約1000人程度の小さな会場だ。僕は配信ライブで観ていた。良いライブだった。

 

ウイカは目に涙を浮かべていた。最後までまともに評価されなかった。正当に評価してこなかった評論家連中を恨んだ。

 

ウイカの歌をカッコ良いと言って評価していたのはアイナくらいではないのか?

 

 

2020年3月にはWACKで最も歴史のあるグループ、ギャングパレードがGO TO THE BEDSとPARADISESの2チームに分裂することが決定。

 

1月には創設者のカミヤサキの脱退が発表されたり、若手で活躍していたハルナ・バッ・チーンが2月に突如脱退するなど、不穏な動きはあったがまさか分裂するとは思って無かった。

 

BiSHには無い明るさと楽しさでBiSHに匹敵するグループになると思っていただけにショックは大きかった。

 

2019年には念願のメジャーデビューをし、東京、大阪での野音ワンマンツアーを大成功させ、また気鋭の劇作家・根本宗子が手掛ける新作舞台「プレイハウス」も成功させるなど、絶好調としか思えなかったのだが…

 

 

2020年10月には元BiS(第2期)のパン・ルナリーフィとYUiNA EMPiREにWaggから昇格したウルウ・ル、そしてソニーのアイドルネッサンスに所属していた野本ゆめか(ユメカ・ナウカナ)で結成されたCARRY LOOSEが解散。

 

99%ブレイクすると思っていたから、この解散はまさに晴天の霹靂。解散理由は不明だが、今更調べようとも思わないし、知りたくもない。

 

 

 

同じく2020年10月には好きだったロックバンド・赤い公園のリーダー、津野米咲が死去。この知らせには耳を疑った。これが一番ショックな出来事だった。

 

津野は赤い公園のリーダーであり、また頭脳的な存在で作詞作曲を担ってきた。アイドルグループのSMAPやモーニング娘にも曲を提供し、大ヒットさせるなど音楽業界の中では天才と呼ばれ知られた存在だった。

 

ブレイク前のヒゲダン藤原聡の才能にも早くから注目し、ツーマンライブを組むなどしていた。

 

2017年には前ボーカルの佐藤千明が脱退し苦境に立たされるも、2018年に解散したアイドルネッサンスから新ボーカルとして、石野理子を迎えバンドは復活。

 

公開したMVも100万再生を突破し、EPやアルバムをリリースするなど精力的に活動。

 

本来であれば2020年5月からLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)を始めとしたツアーを開始するはずだったが、コロナ禍により全て中止。

 

参加する予定で楽しみにしていたから相当ガッカリしたが、まさかこんな事になるとは夢にも思わなかった。

 

コロナが落ち着いてきたらまたツアーをやってくれるものだと信じていた。

 

 

2018年に当時、広島の高校生だった石野理子を迎えてスローペースながらも新体制が始動。

 

2019年には石野が高校を卒業し東京の大学に進学。

 

ようやく本格的なツアーを行うなど、まだまだこれからだった。希望に満ち溢れていたのに。

 

2019年の冬ツアーに参戦し、最高の歌と音楽に酔いしれたのが遠い昔のようだ。

 

僕が参加したのは、キャパ200~300の地方の小さなライブハウスばかりだったが、これからどんどん大きくなり武道館や横アリに立つ日も遠くないと思いワクワクしていた。

 

夢が一転して悪夢となった。

 

そもそも僕にとって石野理子は地方の小さなライブハウスで歌っているような存在ではなかった。

 

彼女はアイナ・ジ・エンドに匹敵する天才的な歌姫だ。歌を聴いた者が思わず「女神だ…」とつぶやくほどの存在なのだ。

 

ソニー初の本格的なアイドルグループのメンバーとして、2014年に全国約9000人の中から最終的に7人が選ばれアイドルネッサンスが結成された。

 

類稀なるその歌で、グループの絶対的なセンターとして君臨したのが石野理子だ。

 

当初は名曲ルネッサンスというコンセプトを掲げ、古今の名曲を独自の解釈と表現でカバーするという活動をしていたが、2017年からはBase Ball Bearの小出祐介が作曲したオリジナル曲も歌うなど活動の幅を広げ、動員数も順調に増えていた。

 

天性の歌姫・石野理子と天性のアイドル・野本ゆめか(ユメカ・ナウカナ)を擁したこのグループが人気になるのは必然だった。

 

しかし何をとち狂ったのかソニーの偉い人たちは2018年2月にグループを解散させるという決定を下す。

 

輝かしい未来が待っていたはずなのに、中堅アイドルグループとして終わってしまった。

 

アマチュア評論家も言っていたが、あと半年ソニーがもっと本気で曲を売り込んでいれば状況は劇的に変わったはずだ。

 

アイドルファン以外の音楽ファンにまで歌は届き、とっくにブレイクスルーを果たしていた。

 

動員数は飛躍的に伸びていき、2019年の上半期には横浜アリーナ公演を実現。下半期には全国を周るホールツアーをやっていたと思う。

 

その頃には、オリジナル曲を中心にやるようになり、センターも入れ替わっていたかもしれないが依然として石野理子は中心人物の1人だっただろう。

 

 

 

 

本当なら12000人の熱狂的な歓声が響く中、横浜アリーナの熱いステージライトに照らされ彼女は歌っていた

 

 

あと少しで手が届く

 

手を伸ばせばもう届く距離

 

 

夢が夢じゃなくなり現実になる

 

 

 

リアルに代わる直前

 

 

掴めなかった。紙一重の差で。

 

 

 

そして地方の小さな箱で歌っている。

 

 

アイドルとして纏っていたカリスマ性を捨てて、1人のアーティストとして。

 

簡単な事ではないが、ここからまた一歩一歩、着実に歩みを進めて行ってほしい。

 

 

見果てぬ夢である横浜アリーナに向けて

 

時が満ちるのを待つしかない

 

 

 

 

ともかく津野米咲の死後も、石野理子と残された赤い公園のメンバーが、音楽活動を続ける選択をしたのを嬉しく思う。どんな形であれ最後まで応援したい。

 

 

 

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こんな感じで2020年の10月、11月には様々な思いが去来したのだが、最終的にもう信じられるのはBiSHしかないと思った。

 

絶対大丈夫だと信じていたのものが、あまりにも呆気なく壊れてきた。しかしBiSHだけは違う。

 

コロナ禍だろうが何だろうが、天才たちが結集したこの奇跡のグループを止める事なんて誰にも出来ない。

 

 

その証拠に、活動は一時的に停滞してもこうやって力強く動き出し、僕たちを励ましてくれている。

 

BiSHこそ最高にして最強のグループ。必ず期待に応えてくれる俺の、いや俺たちのアイドルだ!

 

ただ一抹の不安を感じた。三浦春馬や竹内結子、津野米咲ら才能も将来もあった人たちが闇に飲まれるように突然消えていった。

 

BiSHだけは例外なんてなぜ言える?

 

一瞬そんな不吉な思いが脳裏をよぎったが、すぐ振り払った。ただの杞憂だ。

 

 

BiSHを信じて、ただひたすら献身的に応援すれば良い。

 

元々僕は熱心な清掃員では無かった。

 

ファンクラブにも入っていない。僕が唯一入っているファンクラブは赤い公園のそれだ。人生で初めて入ったファンクラブだ。

 

ギャングパレードのファンクラブには入ろうか迷ったのだが、迷っている内に分裂してしまった。

 

BiSHの6人は超人だ。凡人の僕が応援する必要なんて無い。放っておいても勝手にどんどん上へ昇っていく。

 

だから、わざわざ布教しようと思ったことも無いし、グッズもタオル1枚しか持ってない。ブログも少し書いたが、応援してますというポーズだけだ。あまり時間をかけたくなかった。ファン失格だ。

 

けどもう心を入れ替えた。BiSHには頂点に立って欲しい。期待に応えてもらうためにも本気で応援しなきゃいけない。

 

BiSHの紅白歌合戦への参加を認めなかったNHKの不可解な決定には憤ったが、所詮は金とコネで動く組織に過ぎないのだろう。そんな腐った組織そのうち、ぶっ壊してやれ。

 

だいたい〇〇〇とか見て何が楽しいんだバカ。容姿が良いだけで中身はからっぽ。あんな人形みたいな連中の代わりなんていくらでもいる。裏から大人たちが良いように操作しているだけだろ。

 

清掃員の力でBiSHを東京ドームに押し上げてやれば良い。

 

BiSHさんどうか紅白に出てくださいとNHKが泣きついてくる程の存在にしてやるんだ。

 

だから東京ドームへ行かなくちゃ

 

いや絶対に行くべき

 

ドームに立ってからがスタート

 

ドームに立たなきゃ意味ない

 

本気で布教しないやつは清掃員じゃない。

 

 

 

こんな感じでBiSHに過剰に入れ込んでいたのだが、そんな僕の独りよがりな執着も溶けていった。

 

いつか東京ドームに行ったり、紅白に出て欲しいとは思うが、無理なら無理で仕方ないなと思う。

 

 

そもそも大きいところでライブをやるのが偉いのか?そんな事は無いだろう。東京ドームや幕張メッセ、横浜アリーナなどで無くても良い。

 

地方の小さなライブハウスでも良い。

 

聴衆が数十人でもいい。

 

たった1人でもいい。

 

誰が顧みなくとも、その歌や音楽がたった1人あなたを照らすなら、それにはこの上ない価値があるのだと思う。

 

 

思えばアイナに歌の方が良いといって歌を勧めたのは、一緒にダンスをやっていた親友だった。高校3年生の時に2人でカラオケに行き歌ったら、親友は隣で泣いていたとアイナは言っていた。

 

アイナの才能を最もわかっていたのは作曲家でもプロデューサーでもなければ、評論家でもない。彼女の友人だ。

 

 

BiSHのメンバーも目標の1つとして東京ドームや紅白を掲げてはいるが、それほど執着なんかしていないだろう。もうそんなステージでは無いのだ。とっくに。

 

 

 

 

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モモコグミカンパニーの2作目のエッセイ集『きみが夢にでてきたよ』を読んで、処女作『目を合わせるということ』から受ける印象とだいぶ違うと感じた。

 

処女作の方はもっと屈折していて強い反骨心みたいなものが時折、垣間見えた。それと同時にピュアさや、ひたむきさも感じられてそれが魅力的だった。

 

2作目のエッセイ集は、ただただ素直で素敵でストレートに心に刺さった。

 

モモコは変わったのだろう。

 

モモコだけでなくアユニも変わったと思う。

 

 

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本当本気の歌詞を書いた初期の頃とPEDROで活動している現在とではかなり違うと思う。

 

本当本気の歌詞は、捻じれて屈折して歪んでいて、それがまた面白いのだが、浪漫などの方が自然で心の深くまで染み込んでくる。ずっと聴いていたいと感じる。

 

BiSHも初期の頃は反骨心や承認欲求、ルサンチマンみたいなものが強くあったような気がする。

 

そういえばアイナやチッチも、絶対見返してやるみたいな事を言っていた。それらのエネルギーを全て歌や踊りといったパフォーマンスに昇華し洗練させてきたのかもしれない。

 

だからこそ、ここまで大勢の人たちに音楽が届いたのでは無いだろうか?

 

 

僕はBiSHのメンバーと会って話した事はない。その機会はあったのだが自ら放棄してしまった。バカなことをしたと思う。

 

いつか直接、感謝の言葉を伝えたいという気持ちはあるが、もういいかとも思う。

 

歌を聴くだけで、こんなにも身近にその存在を感じられるのだから。

 

 

 

 

 

音楽の月刊誌、ロッキング・オン・ジャパンで2020年4月号から11月号まで半年以上にわたってBiSH特集が組まれた。基本的に各号、メンバー1人の2万字インタビューを掲載するという構成だ。

 

インタビューは4月号からアイナ・ジ・エンドで始まり、最後の11月号はセントチヒロ・チッチで終わる。

 

チッチへのインタビューだけよく理解できなかった。

 

インタビュアーはBiSHの「物語」を背負って前に進めてきたのはチッチだ、「チッチの物語はBiSHの物語だ」と言う。

 

チッチはチッチで、野音ワンマンを成功させるくらいまでは「あの子はなんでBiSHに入って歌を届けてるんだろう」「本当にやる気があるのかな?」「なんでわかってくれないんだろう」みたいな事をメンバーに対して感じていたらしい。

 

チッチは「私の中ではずっとこうなっていきたいとか、こういうことを言いたい、こういう歌を届けたい、みたいなのがあった」他のメンバーにはそれがなかったと言う。

 

この発言はちょっと言い過ぎではないか?いくら最初期からのオリジナルメンバーとはいえ不遜な態度に感じた。

 

僕はBiSHの中でチッチが最も普通だと思っていた。

 

よく言えば地に足がついていて堅実。悪く言えば地味。

 

チッチの歌もダンスも素晴らしいが、やはりアイナやアユニの方が1歩抜きんでていると思うし、リンリンのような狂気的なパフォーマンスをするタイプでもない。

 

ハシヤスメのように明るく陽気なキャラクターで場の空気を一変させるわけでもない。どちらかというと落ち着いた暗めの雰囲気だ。

 

チッチの言葉は力強く人の心を動かすものだが、モモコのように詩的な言葉を紡いで作品として結晶化させるのとも違う。

 

 

強烈な個性の集まりである天才集団BiSHの中で最も普通なのがセントチヒロ・チッチだと思う。

 

「チッチの物語はBiSHの物語だ」というのはかなり乱暴ではないか?

 

ハシヤスメの物語でもあるし、モモコの物語だという事も出来るはずだ。

 

 

 

そう思ったその時、モモコの著書に書かれていた事を思い出した。

 

チッチを見れば、最新のBiSHの状態がわかる。わたしはそう思う。

 

つらい経験をしてキャプテンという肩書がなくなってからの彼女の方がBiSHにとって柱のような存在になっていると感じる。

 

チッチは涙を流す度に強くなっていると思う。ダイエット企画でチッチがあまりにもつらそうで、これはBiSHをやめてしまうのではないか……というとき、アイナは「チッチの代わりはいない」といった。

 

チッチはわたしにはないものをたくさん持っている。自分の好きなものは好きとはっきり言えるところ。人と関わるのがうまいところ。人に気をつかえるところ。

 

気遣いができるということは、自分の周りがよく見えていると言う事だ。“チッチはBiSHの主人公感がある”とツイッターでつぶやいている人がいて、確かにそうだなと思った。

 

それは、彼女の人間性によるもので、清掃員やメンバー、関係者の人たち、周りの人たちに愛を振りまいて愛されているからこそなのかもしれない。

 

自分だけでなく、周りがしっかり見えているからこそ主人公になれるのだ。

 

振り返ってみると、どんなに苦しい状況の時でもグループを最優先に考える事ができるのがチッチだった。

 

ダイエット企画に失敗してBiSHを辞める寸前までいった時もアイナの「チッチが辞めたらBiSHが終わると思うから、いてくれないかな」との言葉にハッと我に返り「BiSHが終わるっていうのは私一人の問題じゃない」と思い直した。

 

「チッチが考えたことがBiSHの意志になるから」こう言ったのはアイナだったか?

 

2015年のインタビューで、アイナはチッチを次のように評している。

 

私はチッチのことをめちゃくちゃ信頼できるようになったし、一緒にいて支え合ってるなって感じもしてきて。

 

チッチは絶対に守るんですよね、チームワークを。「今ここでコレを言っちゃダメだ」みたいなことを分かってる

 

最年少かつ最後のメンバーとして入ってきたアユニの面倒をよくみて力になってきたのもチッチだ。

 

北海道から出てきたアユニは最初まともにメンバーと話す事も出来なかったのだから、相当大変だったはずだ。

 

「今にも崩れそうな子を守りながら舵を取るっていうのはちょっと難しかった」と言っている。

 

ふと思ったのだが、アユニの台頭で最も割を食ったのがチッチだ。アユニの驚異的な成長により、歌の実力的にはナンバー2からナンバー3になった。人気も2位から3位に下がった。

 

歌割は減ったし、チッチからアユニへ推し変していったファンもいたと思う。

 

そしてアユニだけPEDROで主役級の特別待遇。

 

複雑な感情はあったかもしれないが、そんなのおくびにも出さない。

 

 

 

2020年8月に発売された「音楽と人」という雑誌でBiSH特集が組まれた。そこにアユニ・Dからみたセントチヒロ・チッチの人物評が載っているのでそれを抜粋して載せておく。

 

チッチは本当に<優しい>って言葉が合う人ですね人を思いやる力、支えてくれる力がすごく大きいんですよ。それは初めて会った時から感じてました。

 

メンバーとどうやってコミュニケーション取ったらいいかわからなかった私に対して、優しく話しかけてくれたし、いろいろ教えてくれて。

 

チッチは長女というのもあって、面倒見がいいんです。私は末っ子なので、そこに甘えちゃってますね。

 

BiSHの中でもみんなを引っ張ってくれる大黒柱みたいな存在で、性格的にそれが自分に合ってるということもわかってるんだと思います。

 

だからこそ厳しい目で自分のこともメンバーのことも見てて、重いものをたくさん担いでくれてる、頼れる存在です。

 

中略

そういえば、この前インタビューを受けてる時、チッチが私について聞かれて答えていたら泣き出しちゃって。

 

「アユニはすごくいい方向に変わった」みたいな、私への愛みたいなものを泣きながら話してくれて、すごく嬉しかったですね。

 

他のインタビューでも、私がチッチの作詞について話していたら、チッチが泣いちゃって。嬉しかったのか、悲しかったのか、嫌だったのかわからないですけど(笑)、今こうして私が楽しく音楽できてることをチッチはすごく喜んでくれてるんです。

 

昔から私のことを一番見てくれていたと思うし、だからこそ<あの子があんなに大きくなって>みたいな、親心みたいなものをずっと持ってくれているのかな。

 

みんなを引っ張る立場として、周りをすごく見てるし、変化も敏感に感じ取ってる。私が言葉にしなくても、すごく理解してくれてるなって感じる瞬間があって、それだけ見てくれてるんだなと思うと、嬉しいです。

 

 チッチがいなかったら、本当にBiSHを辞めてたっていうことも過去にはあります。日々深刻に悩んでたこともあって、そういう時に心の中が壊れないようにしてくれてたのはチッチだなぁって思いますね。

 

なにか優しい言葉をかけてくれたり、励ましてくれたっていうわけじゃないですけど、薄っぺらい嘘がつけない人なので、人生の道を外れそうになった時に、ちゃんと正面から向き合って、道を戻してくれる人なんです。

 

 もしアユニが辞めていれば、BiSHはこれほど大きな存在にはならなかっただろう。

 

PEDROで真価を発揮するアユニの音楽的な才能も世に出なかったかもしれない。出てきたとしても、小さなライブハウスを何年も地道に周って、それでもなお武道館には届かなかった気もする。

 

セントチヒロ・チッチはつまらない嫉妬心からダークサイドに堕ちるような女性ではなかったし、他のメンバーもそうだった。

 

もし誰か1人でもアユニの才能を妬んで、足を引っ張ろうとしたり、やる気を失っていれば今のBiSHの成功は絶対に無いし、グループ自体無くなっていた可能性も十分ある。

 

妬みや対抗心といったエネルギーを内部に向けて自壊していく道もBiSHには確かにあった。

 

けど彼女たちはそれを選ばなかった。

 

いじめられっ子の集まり、陰キャの集団などと言われながらも、BiSHは反骨精神や承認欲求、敵愾心といったエネルギーを全てプラスに変えてきた。パフォーマンスとして昇華してきた。

 

チッチはアユニが加入した時にメンバーの意識が変わった、気持ちやパフォーマンス面が変わった。グラグラしてたものがやっと安定したなどと言っていた。

 

最高の才能を集めてもグループとしてまとまれなければ意味はない。

 

BiSHが結成された2015年前後からこれまで、様々なアイドルグループが誕生しては消えていった。中にはBiSHに匹敵するだけの潜在力を秘めたグループもあったかもしれない。しかしBiSHほど成功したグループはほとんど無い。

 

 

 

BiSHというグループにおいて、メンバーの誰よりも自覚的に歌を届けようとしてきたのがセントチヒロ・チッチだ。

 

彼女が高校生の時に孤独に寄り添ってくれたのが、銀杏BOYZやゴイステ、サンボマスターなどの音楽だった。それらのオブラートに包まれていない、生々しい音楽を聴いて感動したからだ。

 

2018年12月の幕張メッセ公演でグループとしての1つの集大成を見せた後、2019年になり、BiSHはメンバー個々の力を更に鍛えていく時期に入った。

 

他のメンバーがソロ活動などで実力を伸ばしていく中、チッチは自主企画としてGEZAN、リーガルリリー、eastern youthといったバンドに声をかけZepp Tokyoでライブを行う。

 

自主企画の意図は、凄いバンドがたくさんあるのに大して知られていないと感じたのがきっかけだ。自分の知名度を使って、良い音楽に光をあて広めていこうとする姿勢に共感する。

 

ロッキング・オン・ジャパンのインタビューを読んでも、チッチは音楽への愛や、それを伝えようとする気持ちが人一倍強いと感じる。以下引用

 

逆に今はBiSHがどんどん大きくなってきていて、そこに対して難しさは感じない?

 

いや、絶対にスタンスは変えないでいようって思っているので。

 

どんだけ大きくなっても小バコでやるし、絶対それは変えるべきじゃないと思ってる。

 

BiSHにしかできないことって絶対あるから、どんだけ大きくなってもいろんな場所に会いに行って。

 

それはみんなで話したこともあるし、なんでもいいんですよね。本当ハチャメチャなやつでもいいから、そういう時が一瞬でもあればBiSHらしくいられる気がして。

 

今はコロナでそれができないけど、いつかまたそういう時が訪れると思っているし。

 

たくさんの人に向けて音楽を届けているけど、目の前にいるあなたの心を動かせることが強さだと私は思ってて。

 

その『あなた』が増えていった先がたくさんの人になればいいし。だからやっぱり目の前の人たちを大事にしたいって気持ちはすごくある」

 

BiSHはメンバー個々の小さな物語を超えた、グループとしての大きな物語を創りだした。

 

今やその物語は数万、数十万もの人々に影響を及ぼすまでになったが、その核となっているのはチッチが言ったようなシンプルな想いなのかもしれない。

 

歌や音楽で目の前の『あなた』の心を動かすこと

 

これがBiSHの理念だと思う。

 

チッチは特典会に来てくれた人の事をよく覚えているらしい。北海道のライブで一度だけライブ後の特典会に来てくれた高校生の子がいた。後日、BiSHのラジオ番組にその子が電話をかけてくる。

 

多くのファンの内の1人。覚えているはずないとその子は思っていたが、ちょっとした会話からチッチはその子が誰か当ててしまう。ツイッターのアカウント名まで覚えていた。

 

詳しくはこのサイトを見て欲しい。

www.ongakunojouhou.com

 

2017年のことなので、今はさすがにこうはいかないと思うが、ファンを大切にするチッチの良いエピソードだ。

 

チッチにとっての『あなた』とは、その他大勢のモブの中の抽象的な『あなた』なのではなく、顔が浮かぶような具体的な1人1人なのだろう。

 

たとえ一度もあった事がなく、顔も名前も知らないとしても

 

 

 

 

 

ふと気づいた

 

 

そういえば僕もBiSHと出会って心動かされた1人だ

 

 

気分が落ち込んでいた時に、たまたまYouTubeでBiSHのライブ動画をみてすぐハマった。

 

それまで特定のバンドの曲をたまに聴く程度だったが、日常的に色々な音楽を聴くようになった。

 

音楽って良いなと心から思ったのはBiSHと出会ってからだ

 

たくさんの素晴らしい音楽と出会えた

 

チッチの想いはとっくに僕に届いていた

 

 

 

チッチは2015年のインタビューでこう語っている。

 

チッチはBiSHにおいてどんな存在になりたいんですか?

 

みんなが安心できる場所になりたい。メンバーもオタクも私がいれば安心って思ってくれたらうれしいし。

 

でも同時に注目される人ではありたい。だからエースじゃなくてもいいんですけど、センターは常に求めたい。

 

エースはエースに相応しい人がならないとおかしいし、それに相応しいのはアイナだと思う。

 

でもセンターはいろんなことが含まれてセンターになると思ってるので。

 

たとえ技術が足りなくても、そこに立てる自分ではありたいです。

 

名目上チッチはキャプテンでは無くなったが、彼女は紛れもなくBiSHのキャプテンでありセンターだ。

 

 

 

 

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セントチヒロ・チッチはBiSHの心臓だと誰かが言った。上手い事を言うと思う。

 

モモコの処女作「目を合わせるということ」の一章「カラフル」ではBiSHというグループを次のように評している。

 

今も昔もBiSHというグループは、別々の道を歩んできた女の子たちがあるとき偶然交差点ですれ違う―――そんな瞬間を捉えたような集まりなのである。

 

そんな偶然交差点ですれ違っただけのような、強い個性を持った集団がバラバラにならずに、グループとして一体感を保っているのはセントチヒロ・チッチがいるからかもしれない。

 

 

全身の隅々にまで熱い血を送りこむBiSHの心臓

 

その心臓が脈打つ限りBiSHは止まらない

 

 

 

 

 

12月24日のREBOOT BiSHに僕は行けない。

 

配信でしか観られないがライブの成功を心から祈ってる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたたちの奏でる音楽は

 

僕にとって

 

きみにとって

 

誰かにとっての救いです

 

ありがとう

 

 

 

 

 

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